京都銭湯の楽しみ方 その1

京都銭湯の作法で、最も”京都らしい”もの-

それは、籠の使い方。京都では必ずといっていいほど、ロッカー周りに大きな籠が用意されている。服を脱ぎ籠に入れたら、籠ごとロッカーへ押し込むのが京都の作法。他の地域では籠に入れっぱなし、もしくは直にロッカーへ入れるのが当たり前だが、京都ではこの作法が文化として根付いている。

 

一見、動作がひとつ余計に思えるかもしれない。だがこれは、数の限られたロッカーを有効に使う手段なのだ。今でこそ考えられない風景だが、銭湯が生活の一部だった昭和中期までは、浴室から脱衣所までお客さんでごった返していた時代。当然、ロッカーも不足気味になる。そこでお湯から上がったら、着替えのためにいつまでもロッカーの前を占領しているのではなく、さっと籠を引いてすぐ次の人に譲ることができるように、という意味があるのだ。

京都人らしい気の遣い方、その知恵に思わず感心してしまう。

 

慣れてきたら、その籠にも注目してみよう。運がよければ、昔ながらの柳行季(やなぎごうり)に出会えるはず。手作業でひとつひとつ編み上げ作る、京都ならではの伝統工芸品。ひとつ8万円もする高級品、昔から綻びたら職人が編みなおし洗いなおして、何代にも渡り使われてきた。

だが現在は、職人もただ一人を残すのみ。入浴客も減少し、高価な工芸品を新たに購入する余裕もなく、どんどんプラスチックの籠に置き換わってしまっている。幸運にも発見できたなら、手仕事の温もりと重ねてきた時間に、思いを馳せてみよう。